青森県南部地区 抗凝固薬Net Work Meetingに参加しました。
2012/11/9 19:00-20:30、八戸プラザホテルで開催されました。
大変分かりやすい、勉強になる、興味深い講演会でした。
当クリニックからは、4人が参加しました(看護師全員が自主的に参加)。

座長:平賀 仁先生 八戸市立市民病院 循環器科 部長

一般演題
『症例報告①』
演者 長谷川 一志 先生 八戸市立市民病院 循環器科 医長
『症例報告②』
演者 亀田 邦彦 先生 三沢市立三沢病院 医長

特別講演
『抗凝固薬UPDATE』
演者 奥村 謙 先生 弘前大学大学院医学研究科 循環呼吸腎臓内科学 教授

内容ですが、おおよそ以下の内容でした。

ワルファリンのCHADS2スコア別Net clinical benefitの紹介

抗凝固療法を開始する際CHADS2スコアを参考にしていますが,リスクが比較的低い人の適応についての問題があります。リスクとベネフィット比較して考えたものが、ワルファリンのCHADS2スコア別Net clinical benefitです。抗凝固薬は、「出血」という大きなリスクを有することがその背景にあります。抗凝固療法は塞栓予防のベネフィットが出血リスクを上回る限りにおいて適応となると考えられ,こうした視点からNet clinical benefit(リスクと比較した上でのベネフィット)という概念も提唱されています。ワルファリンのCHADS2スコアごとのNet clinical benefitを検討したところ,スコア1点以下ではワルファリンの有用性は示されませんでした。一方、スコア1点の心房細動患者数、脳梗塞患者発症数が多いのが実情です。

    Net Clinical Benefit

Singer DE et al. The net clinical benefit of warfarin anticoagulation in atrial fibrillation. Ann Intern Med. 2009 ; 151 (5) : 297-305.

CHADS2スコア(脳梗塞発症リスク評価①)

CHADS2スコアは,心不全,高血圧,75歳以上,糖尿病を各1点,脳梗塞/TIAの既往を2点として脳梗塞リスクを層別化したものです。スコアが高くなるほど年間脳梗塞発症率が上昇。スコア2点では4%とハイリスクになり,この場合ワルファリンは日本や欧米のガイドラインにおいて推奨度クラスIに位置付けられています。しかしスコア1点の場合は,日本のガイドライン1)でも「考慮可」(ワルファリンの場合)とされており議論の多いところです。

心房細動治療ガイドライン

心房細動における抗血栓療法
日本循環器学会「心房細動における抗血栓療法に関する緊急ステートメント」より

1)日本循環器学会合同研究班報告:心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版).Circ J. 2008 ; 72 (Suppl. IV) : 1581-638.

CHA2DS2-VAScスコア(脳梗塞発症リスク評価②)

CHADS2スコア1点の場合をどのように考えればよいのでしょうか? 個別の患者ごとにきめ細かく対応することが必要です。ひとつの方法として,CHA2DS2-VAScスコアを用いることが考えられます。同スコアはCHADS2スコアに血管系疾患,65-74歳,女性が各1点として追加され,75歳以上が2点に変更されたものです。

CHA2DS2-VAScスコア

補足
•75歳以上の場合はリスクが2倍であることを反映しています。
•元々、Scはserum creatinineの意味で使うつもりだったそうですが、データが少ないため、急遽sex categoryに変更したそうです。
•しかし、実際、女性は、男性と比較しリクスとして変わらないため、CHA2DS2-VAScスコアではなく、CHA2DS2-VAスコアでも良いのではないかとの説明でした。

HAS-BLEDスコア(出血リスク評価)

抗凝固療法を行い前に、出血リスクを患者ごとに評価する視点も大切です。その際HAS-BLEDスコア(高血圧,肝・腎機能障害,脳卒中,出血,INR管理不良,65歳超,薬剤/アルコール各1点)が参考になります。これらのリスクを多く有する場合は,ワルファリンの用量を低めに設定するといった配慮がされてもよいと思われます。脳卒中,出血,65歳超は努力してどうにもならないので、出血リスクを低く抑えるため、CHADS2スコア1点の人にこそ適切な血圧管理,INR管理,節酒指導を行うようします。こうした視点にさらに「患者の価値観」「選考」を考慮してワルファリンかダビガトランかの意思決定をすべきと考えられます。尚、日本人の場合は、4点以上が出血を起こしやすいとのことでした。

HAS-BLEDスコア

プラザキサ(一般名:ダビガトラン)という薬

新規抗凝固薬ダビガトランは,CHADS2スコアの多少によらず一貫した有効性と安全性が確認され,日本循環器学会からの緊急ステートメントにおいてもCHADS2スコア1点の例で「推奨」とされています。RE-LY試験でワルファリンと同等またはこれを上回る有効性と安全性が示されました。また血中モニタリングが不要,納豆等の食事制限が不要であるなど簡便性に優れています。

日本人を含む第Ⅲ相国際共同試験(非劣性試験:RE-LY)におけるプラザキサの安全性
•プラザキサ(150mg 1日2回投与)はワルファリンとくらべて脳卒中/全身性塞栓症の発症リスクを有意に低下させた。
•プラザキサはワルファリンと比べて頭蓋内出血の発現リスクを有意に低下させた。

その他

•ダビガトラン処方の際は、定期的にaPTT、腎機能、貧血をチェックする。
•ワルファリン投与による出血の年間発症率は大出血(アジア人3.82%対非アジア人3.53%),消化管大出血(1.41%対1.01%),頭蓋内出血(1.10%対0.71%),全出血(22.03%対17.74%)でアジア人の方が高かった。アジア人では大出血,頭蓋内出血,全出血がワルファリン群と比べてダビガトランで有意に抑制され,消化管大出血はワルファリン群と比べてダビガトランで減少傾向が認められた。
•脳出血の10%がワルファリン内服患者だった。
•脳出血の3週間以内の死亡率は、ワルファリン(-)が9%、ワルファリン(+)が21%