本日、インフルエンザ予防接種後に発熱(38℃台)がみられた患者さまが来院。
「インフルエンザの検査をして欲しい」との要望がありました。
本人の意向もあり、インフルエンザの検査を実施しましたが、インフルエンザA、インフルエンザBとも陰性でした。

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、ウイルス自体は化学的に処理され病原性はありませんから、その接種によってインフルエンザになることはありません。ワクチンの接種後に発熱した場合も、インフルエンザ以外の冬季に見られる呼吸器疾患にかかった可能性もあり、必ずしもワクチンの副作用とは限りません。

それでも、予防接種の後まれに副反応が起こることがあります。

一般的に副反応は軽く、10〜20%でワクチンを接種した場所が赤みを帯びたり、腫れたり、痛んだりすることがありますが、通常2〜3日のうちに治ります。全身性の反応としては、5〜10%で 発熱、頭痛、さむけ、体のだるさなどがみられますが、やはり2〜3日のうちに治ります。ワクチンに対するアレルギー反応としては、湿疹、じんましん、かゆみなどが数日見られることもまれにあります。 接種後数日から2週間以内に発熱、頭痛、けいれん、運動障害、意識障害の症状が現れる等の報告もあります。非常にまれですが、ショックやじんましん、呼吸困難などがあらわれることがあります。またインフルエンザ脳症という、インフルエンザをきっかけに生じた脳症で,意識障害やけいれんの症状を呈することがあります。主に6歳以下の子どもが発症し、1歳をピークに幼児期に多く発症します。死亡率は15%であり,後遺症も25%と重篤な疾患です。全国で年間100人から300人位発症しています。(厚生労働省:インフルエンザ脳症研究班の報告より)

ただ確実に言えることは、ワクチン接種後の発熱等の副反応は、どうしてもある程度生じるのはやむを得ないと言うことです。
これは、どのようにワクチンの製造技術が進化しても避けることは出来ません。

何故ならば、ワクチン接種とは元々、ウィルス等の微生物そのもの、または、その一部を生体内に強制的に注入し、「異物」と認識させて免疫反応を呼び起こし、これによって注入された「異物」を排除するための抗体を生体(この場合人間)に作らせる一連の反応だからです。 つまり、誤解しないで欲しいのですが、ワクチンを接種された宿主(この場合人間)に1種のアレルギー反応を強制的に起こさせているのです。 従って、ワクチン接種後、発熱したというのは、接種されたインフルエンザワクチンに全うに体が反応して、抗体が産生されていたものと考えられます。

従って、熱が出たからと言って、ワクチンが悪い方ばかりに働いていたとは言えないのです。
勿論、高熱が続けばしんどいですし、不快なのは事実です。しかし、医学的には、発熱は1種の生理現象(防御反応)であり、その殆どは危険な兆候とは言えません。
ワクチン接種の際に発熱よりも遙かに懸念される危険な兆候は、アナフィラキシーショック反応と言って、呼吸困難(最悪は窒息)を起こすものです。