2011年3月14日ワーファリンと同様の働きの新規抗凝固薬プラザキサが発売になりました。
ワーファリンと同じように、血液を固まりにくくし、心房細動による脳塞栓症を予防するお薬です。

心房細動に起因する脳卒中(心原性脳塞栓症)は、発症すると1年以内に5割の患者が死亡するなど、脳卒中の中でも特に生命予後が悪く、また、たとえ一命を取り留めたとしても重篤な障害を残すため、予防が重要です。

プラザキサの有用性は、従来の標準治療薬ワルファリンを対照に、心房細動患者の脳卒中/全身性塞栓症発症抑制を検討したRE-LY試験の結果に示されています。
RE-LY試験は、日本を含む44ヵ国、951施設で18,113例(日本人326例を含む)を登録して実施された、この治療領域で最大規模の無作為化国際共同第3相試験です。
RE-LY試験でプラザキサ(ダビガトランエテキシラート)は、通常用量の150 mg 1日2回投与群で、心房細動患者での脳卒中/全身性塞栓症の発症を、従来の標準治療薬であるワルファリンに対して有意に抑制し(相対リスク35%減少)、優越性を示しました。プラザキサは110 mg 1日2回投与群でも、ワルファリンと同程度に脳卒中/全身性塞栓症の発症を抑制しています。

またRE-LY試験で得られたプラザキサの安全性プロファイルから、プラザキサが150 mg 1日2回投与群、110 mg 1日2回投与群とも、臨床上特に深刻となる頭蓋内出血の発現率について、プラザキサ150 mg 1日2回投与群では、ワルファリンと比較して、頭蓋内出血の発現率に59%のリスク低下がみられます。プラザキサ110 mg 1日2回投与群では、ワルファリンと比較して、頭蓋内出血の発現率は70%リスク低下しています。

(日本ベーリンガーインゲルハイム株式会プレスリリース資料参照)

ワーファリンに比べて良い点と、欠点とを比較検討してみました。

ワーファリンに比べて良い点

1)食べてはいけない食品がなくなる(納豆、青汁、クロレラを食べてもかまいません)。

2)毎月の採血がなくなる(注:3ヶ月に1度程度、APTT、一般的血液検査、腎機能のチェックは必要です)。

3)毎回ほぼ決められた数だけ飲めばよい(220mg/日、300mg/日)。ワーファリンのように、月によって飲む数が変わるということがなくなります。

4)手術のときなどは、24時間前まで服用可能。

5)ワーファリンより脳卒中/全身性塞栓症の発症を抑制する。

6)ワーファリンより出血の合併症が低くなる。

7)他の薬との飲み合わせをこれまでより気にしなくて済む。

ワーファリンに比べての欠点

1)1日2回飲む必要がある(ワーファリンは1日1回でしたが、必ず1日2回飲むことになります)。

2)薬局で支払う金額が上がる。
ワーファリン(1錠9.6円)
プラザキサ(1カプセル当たり、75mgが132.60円、110mgが232.70円)。
150mg1日2回は、プラザキサ(75) 4C 2x 132.6*4=530.4 1日薬価 530.4円
110mg1日2回は、プラザキサ(110) 2C 2x 232.7*2=465.4 1日薬価 465.4円
なおワーファリンのときにかかった採血料、判断料等は減ります。

3)これまでよりも飲み忘れに注意が必要
ワーファリンよりも速やかにからだからなくなりますので、飲み忘れると半日程度で効き目が切れてくる可能性があります。

4)出血が起きたときなどの対処法が不明。
ワーファリンには中和薬がありましたが、プラザキサにはないため、出血時は服薬を中止することのみが対処法となります。

このような良い点と欠点とを比較し、患者さんとの相談の上、切り替えについて考えていきたいと思います。