心房中隔欠損症

心房中隔欠損症

心房中隔欠損症2

概要:心房中隔に欠損孔が残存した状態を心房中隔欠損症という。
しかし、このうち心房一次孔欠損(primum defect)は心内膜床欠損症に含むのが普通。
•心房中隔欠損症の90%以上が二次孔欠損、7%が静脈洞型、その他は2%

症状
左-右短絡疾患
生後2~3ヶ月ごろから短絡量は増加する
ほとんどの人が症状をともなわずに検診などを契機に発見される
呼吸器感染を繰り返すとか、不整脈をともなうこともある
心臓の聴診所見でも見逃されることが多い→成人で診断される先天性心疾患で最も頻度が高い

心房中隔欠損症3

検査と診断
胸部レントゲン:
•肺血管陰影の増強
•心陰影では左第1弓が小さく、2弓が顕著、右房、右室の拡大
(左第1弓:大動脈弓、左第2弓:肺動脈、左第3弓:左心耳、左第4弓:左心室、右第1弓:上大静脈、右第2弓:右心房)

心電図:QRS波の電気軸の右軸偏位と不完全右脚ブロック

聴診所見:肺動脈弁口(第2肋間胸骨左縁)で収縮期駆出性雑音、2音の固定性分裂、第5肋間胸骨右縁で拡張期雑音;右室へ流入する血液が三尖弁を通過する流入音

心臓超音波検査:四腔断面図で心房中隔を左から右へ流入し、三尖弁に流れ込む血流を描出できる。

治療
体外循環を使用して、右房切開で欠損孔を直接、またはパッチを用いて閉鎖するのが標準的である。二次孔欠損では直接縫合、静脈洞欠損ではパッチを用いて、中隔の形成をする。非侵襲的にカテーテルを用いた欠損孔の閉鎖法も行われる。

経過•合併症
•体重が>10kgなら、手術は自己血使用だけで終わる。特別な治療を必要としない。心房性不整脈の起こる可能性あり。
•成人では二次的な変化として右室と左室の容量バランスが悪く、左心不全の症状を示すことあり。
血管拡張薬などの治療が必要になる。
•肺高血圧症を伴う患者では十分な酸素の投与やNO治療も考慮。遠隔期ではプロサイリンなどの肺血管の拡張薬治療も行われている。

予後
•肺高血圧を認めない患者は術後も通常の日常生活、運動が可能
•肺高血圧のある患者は運動制限などが必要となる
•成人で高血圧症をともなうと左室の拡張期圧が高くなり、欠損孔の閉鎖で肺静脈圧は上昇し、肺高血圧が残存し、さらに生活の質が落ちる。
•心房性の不整脈、特に心房内で伝導障害が問題となる。

患者指導、ケアのポイント
•肺高血圧をともなう患者では定期的な診察を勧める必要あり
•脈の異常が頻回にあれば、24時間ホルター心電図などの精査を勧める
•心房中隔欠損を瞬間的に右-左短絡することで、脳塞栓をきたすことがある。